夕方のスーパー。買い物を終えた私は、発泡スチロールの白いトレーを水でさっと洗い、レジ横の回収ボックスにそっと入れた。毎週の、何でもない動作だ。けれど、ふと手が止まる。——この箱に入れたトレーは、このあと一体どこへ行くのだろう。今日は、その「その先」を追いかけてみることにした。

第1章 箱の中の一日 ―だれが運ぶのか

回収ボックスは、たいてい閉店後に回収される。意外なのは、専用のトラックが取りに来るわけではないということだ。多くのスーパーでは、容器メーカーや包材問屋が「商品を納品した帰りの便」でトレーを引き取っていく。空で帰るはずの車に積み込むことで、新たな輸送を増やさずに集める仕組みだ。いま、店頭から回収されるトレーの9割以上が、この“ついで”の物流網に乗って運ばれているという。私の一枚も、たぶんその一台に揺られている。
第2章 工場で、トレーは粉になる

運ばれた先はリサイクル工場。ここでトレーは選別され、細かく砕かれ、何度も洗われ、殺菌・脱水の工程を経て、最後は米粒のような樹脂の粒「ペレット」になる。ここで思い知るのは、汚れたトレーは弾かれてしまうという事実だ。ソースやタレが残ったものは再生ラインに乗れない。私が出がけに「さっと洗った」あのひと手間は、ちゃんとここで効いてくる。
第3章 もう一度、トレーになる

ペレットは再び溶かされ、成形され、新しいトレーへと生まれ変わる。使用済みのトレーが、また食卓に並ぶトレーになる——この循環は「トレーtoトレー」と呼ばれている。石油から新たに作るのに比べ、CO2の排出量はおよそ3割少なくて済むとされる。捨てればゴミ、戻せば資源。同じ一枚が、出し方ひとつで別の未来を歩む。
第4章 旅が途切れるとき

もっとも、すべてのトレーがこの旅を完走できるわけではない。色や柄のついたトレー、ラップやシールが残ったもの、別の素材が混ざったものは、循環から外れてしまうことがある。きれいごとだけでは回らないのだ。だからこそ、「洗う・乾かす・対象を見分ける」という入口の精度が、最後の再生率を静かに左右している。
エピローグ:明日のひと手間

私の白いトレーは、いまごろ粉になり、ペレットになり、どこかで新しい一枚に生まれ変わろうとしているかもしれない。その旅を支えていたのは、特別な技術だけではなかった。出す前のほんの数秒——水で流し、水気を切り、正しい箱に入れる。その小さな選択の積み重ねが、トレーをゴミではなく資源に変えていく。明日もまた、私は回収ボックスの前に立つ。今度は、その先の長い旅を思い浮かべながら。
この記事を実践すると、どれだけCO2が減る?
- トレー1枚を洗って店頭回収に出す → 約5gのCO2削減(試算)
- 週5枚を1年間続けると → 約1.3kgのCO2削減(試算)
- 再生原料でつくる「エコトレー」は、新品製造に比べてCO2排出33%減(エフピコ公表値)
- 店頭回収の循環は全国で年間約20.9万トンのCO2排出を抑制——スギ約1,500万本の年間吸収量に相当
※1枚あたり・年間の数値は、トレー1枚約5g、製造時排出量を1枚約15g-CO2、削減率33%として編集部が計算した概算です。33%・年間20.9万トン(2025年3月期)はエフピコ社の公表値。スギ換算は1本あたり年間約14kg-CO2(林野庁)で計算。

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