家庭の電気は、どこから来ているのか|世帯あたり年2.47トンのCO2と、その7割を占めるもの

夕暮れの空に伸びる送電線と鉄塔

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前回まで、このサイトでは「捨てたあと」を追いかけてきた。トレーはどこへ行くのか。生ゴミは誰がいくらかけて燃やしているのか。

今回は逆方向を見る。入ってくる側だ。

いま部屋の照明を点けている電気は、どこかで何かを燃やして作られている可能性が高い。その「何か」を私たちは選べる。実は、ごみの分別よりもはるかに短い時間で、はるかに大きな量が動く。

ただし、この分野には気持ちのいい言葉が多い。「実質再生可能エネルギー100%」「CO2排出ゼロ」。これらが何を意味していて、何を意味していないのか。そこを曖昧にしたまま「切り替えましょう」とは言いたくない。

だから最初に、現在地の数字から始める。

夕暮れの空に伸びる送電線と鉄塔
コンセントの先では、いまも多くが火力発電で作られている(写真はイメージ:Adobe Stock)
目次

1. 家庭から出るCO2は、世帯あたり年2.47トン

環境省は毎年、全国の家庭を対象に「家庭部門のCO2排出実態統計調査」を行っている。実際の検針票やレシートまで見て集計する、かなり手間のかかった調査だ。

その令和5年度の結果によると、1世帯あたりの年間CO2排出量は2.47トン。

2.47トンという数字は、生活実感からは遠い。比較のために、前回の記事で扱った家庭ごみの数字を並べてみる。

項目1世帯・1年あたり
家庭からのCO2排出量2.47トン
家庭ごみ(4人世帯換算・編集部試算)約0.7トン

重さで見ると、私たちが「出しているもの」の主役はごみではなく、目に見えない気体のほうだ。ごみ袋は毎週手に持つから存在を意識するが、CO2は手に持たないので意識されない。それだけの違いでしかない。

2. その7割は「電気」

2.47トンの内訳を、エネルギーの種類で割ってみる。

エネルギー種排出量(t-CO2/世帯・年)割合
電気1.6767.6%
都市ガス0.3614.6%
灯油0.3012.1%
LPガス0.145.7%

電気だけで、家庭のCO2の3分の2を占める。

ここが、この記事のいちばん大事な一行だ。家庭でできる環境行動はたくさんあるが、量的なインパクトで見れば、電気の話が他を圧倒している。

なぜ電気の排出量が大きいのか。理由は単純で、日本の電気の多くがいまも火力発電で作られているからだ。コンセントの先では、天然ガスや石炭が燃えている。

夜、照明が灯ったリビングルーム
家庭のCO2の46.3%は照明・家電製品が占める(写真はイメージ:Adobe Stock)

3. 何に使っているのか

では、その電気(と他の燃料)を、家庭は何に使っているのか。同じ調査の用途別の内訳がこうなっている。

用途割合
照明・家電製品等46.3%
給湯24.0%
暖房19.5%
冷房5.7%
台所用コンロ4.5%

冷房は5.7%しかない。

夏になると「エアコンの設定温度を1度上げよう」という話が必ず出てくる。悪いことではないが、家庭のCO2の5.7%の一部を削る話をしていることになる。一方で、照明・家電と給湯を合わせた70.3%については、あまり語られない。

節約行動の話題の量と、実際の排出量の分布が、きれいにねじれている。

4. 減らす経路は、3つしかない

電気に由来するCO2を減らす方法は、突き詰めると3通りしかない。

① 使う量を減らす
機器の買い替え(照明のLED化、高効率給湯器への交換)と、使い方の見直し。効果は確実だが、上限がある。ゼロにはできない。

② 電気の「中身」を変える
契約する電力会社・プランを、CO2排出係数の低いものに変える。使う量は変えずに、同じ量の電気の排出量を減らす。工事も費用もかからない。

③ 自分でつくる
屋根で発電し、その場で使う。蓄電池を足せば、発電した時間帯と使う時間帯のずれを埋められる。初期費用は大きいが、効果は長期にわたる。

このうち②が、いちばん手間に対する効果が大きい。そして、いちばん誤解されている。

電気メーターの検針値を書き取る手元
使う量を変えずに、電気の「中身」を選ぶという方法がある(写真はイメージ:Adobe Stock)

5. 「実質再エネ100%」は、何を意味しているのか

電力会社のプランを比べると、CO2排出係数(1kWhあたり何kgのCO2を出しているか)が公表されている。2024年度の実績では、大手電力会社の調整後排出係数はおおむね 0.396〜0.669 kg-CO2/kWh の範囲に分布している。関西電力が0.396、東京電力エナジーパートナーが0.421、沖縄電力が0.669といった具合だ。

そして「再エネプラン」の多くは、この係数が 0.000 と表示される。

ここで正直に書いておきたいことがある。あなたの家のコンセントに届く電子が、切り替えた瞬間から再エネ由来になるわけではない。

送電網は全国でつながっていて、どの発電所の電気がどの家に届くかを分けることは物理的にできない。では0.000はどこから来るのか。非化石証書という制度だ。

資源エネルギー庁の説明によれば、非化石証書とは「石油や石炭などの化石燃料を使っていない非化石電源で発電された電気が持つ非化石価値を取り出し、証書にして売買する制度」である。発電事業者がこの証書をオークションで売り、電力小売事業者が買う。買った事業者は、販売する電気のCO2排出量が少ないと見なされる。

つまり「実質再エネ100%」とは、電気そのものではなく、環境価値を買っているという意味だ。

では意味がないのか。そうは思わない。証書の代金は再エネ発電事業者の収入になり、再エネへの需要があることが市場に伝わる。切り替える世帯が増えれば、証書の価値が上がり、再エネを増やす側の経済的な理由が強くなる。仕組みとしては、投票に近い。

ただし、「自宅の電気が再エネになります」という説明を見かけたら、それは正確ではない。正確には「再エネが増えることにお金を投じています」だ。

言い換えれば、これは効果が薄いという話ではなく、効果の届き方が違うという話だ。この構造を知ったうえで選ぶなら、②は依然として、手間あたりの効果がいちばん大きい選択肢である。

6. この記事の数字を、わが家に当てはめると?

編集部試算

総務省「家計調査」の2025年平均によると、二人以上の世帯の電気代は月13,219円、年に直すと約15.9万円。

一方、環境省の調査では電気由来のCO2は1世帯あたり年1.67トン。これを東京電力エナジーパートナーの2024年度排出係数0.421kg-CO2/kWhで割り戻すと、年間およそ3,900〜4,000kWhを使っている計算になる。

ここから、3つの経路の効果をざっくり見積もると——

  • ①使う量を1割減らす → 年約167kg-CO2の削減。電気代は年約1.6万円の節約
  • ②係数0のプランに切り替える → 計算上、年1.67トンがゼロ計上に(ただし証書ベース)
  • ③自家消費で3割まかなう → 年約500kg-CO2の削減。加えて、その分の電気代がかからない

※前提:世帯の電気使用量は上記の逆算値。排出係数は事業者・年度により変動します。②は非化石証書による計上上の削減であり、送電網に流れる電気の物理的な構成が変わるわけではありません。③の自家消費率30%は住宅用太陽光の一般的な目安で、屋根の向き・面積・生活パターンにより大きく変わります。実際の効果はご家庭の条件により異なります。

屋根に太陽光パネルを載せた住宅
次回は、実際に見積もりを取って中身を比べる(写真はイメージ:Adobe Stock)

7. 次に確かめに行くこと

この記事は現在地の確認までで終える。次に知りたいのは、③の実際だ。

太陽光発電は「元が取れる/取れない」の議論が延々と続いている分野で、しかもその答えは屋根の向きと面積と、住んでいる地域の日射量で人それぞれ変わる。一般論では答えが出ない。

だから次回は、実際に複数社から見積もりを取って、その中身を並べて比べることにする。何が高いのか、業者によって何が違うのか、削れるのはどこか。数字を公開しながら追いかけたい。

「捨てたあと」を足で確かめてきたのと同じやり方を、「入ってくる側」にも適用する。

(前回の記事:家庭の生ゴミは、どこへ行っているのか)

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わが家の屋根だと、いくらになる? 先に「相場」だけ知っておく

太陽光の損得は、屋根の向き・面積・地域の日射量で家ごとに変わります。一般論で悩むより、複数社の見積もりを並べたほうが早い。編集部も次回、同じやり方で実際に見積もりを取ります。

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※見積もり・相談の依頼は無料ですが、申し込み後に業者から電話やメールで連絡があります。同じ家で複数のサービスに申し込むと、連絡も重なります。まずは1〜2社に絞るのがおすすめです。契約するかどうかは、見積もりを比べてからで構いません。

付録:屋根がなくても、太陽光を「手元で」試す方法

住宅の屋根に載せる太陽光は、見積もりを取ってからの話になる。その前に、賃貸やマンションでも試せるのが「ポータブル電源+折りたたみソーラーパネル」の組み合わせだ。

ただし、ここも正直に書いておく。CO2削減の効果は小さい。設置条件が良くても、パネル1kWあたりの発電量は年1,000kWh前後が目安とされる。40Wのパネルなら年約40kWh、100Wでも約100kWh。世帯の年間使用量(約3,900kWh)に対しては1〜3%程度で、CO2に直すと年約17〜42kgだ(いずれも編集部試算・晴れた日に毎回日なたへ出す前提。実際はこれより少なくなる)。

それでも勧める理由は2つある。1つは停電への備えになること。もう1つは、自分で発電した電気の量を毎日数字で見られることだ。「電気はどこから来るのか」を実感する教材としては、これ以上のものはない。

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出典

  • 環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査(令和5年度)」env.go.jp
  • 環境省「令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 結果について(確報値)」PDF
  • 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均」PDF
  • 資源エネルギー庁「非化石証書を利用して、自社のCO2削減に役立てる先進企業」enecho.meti.go.jp
  • 資源エネルギー庁「電気事業者別排出係数」enecho.meti.go.jp
  • 環境省「電気事業者別排出係数(令和7年提出用)」PDF
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